いけやんの小説投稿掲示板です(>ω<)

FC2BBS

27547

拳銃女王 act5 S・S・C大攻勢!① - bebe

2014/10/26 (Sun) 08:08:10




リクライニングチェアにもたれながら、咥えた煙草からゆっくり立ち昇る煙は、室内に充満することなく、全開の窓から外へと排出されていく。
 そろそろ禁煙しようかな…?
 人生でその問いをするのは、これで数十回目である。
 これまで二日ともったことはないのだけれど。
 
 積乱雲に隠れていた太陽が正午になって現れる。
 南向きのリビングをじっくりと、リクラインニングに投げ出された素体ごと焦がしだす。
 じりじりと……やんわりと。やがて血液から肉、骨ごと焼いてしまいそうなほどの灼熱と変わるだろう。
 このまま焼かれて死んでしまうのも乙……
 
 大金が手に入ってすることがなく、暇を持て余すだけの毎日だ。
 いっそ死んであの世に行った方が、張り合いがあるのかもしれない。
 よし―
 そうと決めたら、ここで干からびて、ミイラになってみようと雨子は決心するのであった。
 
 国後…さん………雨子……
 瞑想する雨子に、誰かが呼びかける。少年の声だ。
 とても心地よく、心臓にからりとした風を送り込んでくるのだが、それでも起きる気にはならない。
 邪魔をするな。私はこれからミイラになるのだから。即身仏というやつに。
 
 そして、このまま永遠の眠りに就こうとしたところ、イスが勢いよく前後に揺れ出した。
 雨子、床へすっ飛ばされる。
「あいて!」
「ごめんなさい、大丈夫だった? 雨子さん、死んだのかなあって、確かめたんだよ」
 
 あまり大丈夫ではない。腰と後頭部を打って、現実へと引き戻されたのだから。
「……潔い死に様を見せてやりたかったのさ」
 打ちつけた場所をさすりながら、雨子を死の淵から救ったヘルメス・ステファン・カスティーリャの相変わらずのパワーに、恨みか感謝かどちらを言っていいものか、その迷いと眠気に雨子は眼を回す。
「犯罪者の最期は看取られず、独り寂しく死ぬことなんだね!」
「そうだよ……お前、何か嬉しそうだね」
 
「うん。雨子さんが死んだら、遺産は俺が相続することになるからさ!」
 とんでもないことを言うガキだ。
「私の遺産は妹の麻衣に全部やるんだ。フィーンドのお前には一銭だってやるものかい」
「うぇ~ん。そんなに冷たくするなよぉ、雨子ぅ」
 
「呼び捨てにするな!」
「レインちゃん♪」
「名前を変換するな!」
「雨子さん、俺は前から君のことが―」
 
「プロポーズするな! 渋くないぞっ」
 と、まあ、国後雨子はだるくも気ままな毎日を過ごしているのである。
 危険を冒さないことは有り難いが、このままでは感覚が鈍ってしまうのではないかという危惧もあった。
 今夜あたり、リハビリ代わりにいっちょ押し込みに行ってやろうか……?
 
「眼つきが危ないよー、怖いよー。お巡りさ~ん、この女の人捕まえてください~」
 こいつめ。いつの日か本気で、金持ちの間で流行しているというフィーンドの剥せいにしてやろう。
「あっ、そうだ雨子さん。お巡りと言えば…」
 ヘルメスがもったいぶったような言い方をする。
 
 教えていいかどうか、雨子と外、ちらちら視線を泳がせる。
「ん、どうしたんだい?」
「さっき、買い物帰りに、S・S・C(シャイニング・ストリート・チルドレンズ)の憲兵さんが話してるのが聞こえたんだけどさ」
 やはりヘルメスの歯切れが悪い。
 
 退屈でしょうがなく、つまらない毎日を過ごしていた雨子は、ヘルメスからトラブルの匂いをかぎ取った。何かある―
「何だよう、はっきり言え!」
「うっ、あ、あ、はい」
 リボルバーを取りだした雨子に、ヘルメスはようやく仕方なく口を開いた。

「あ、明日の早朝、去年の第一次攻勢に引き続き、S・S・Cが第二次攻勢をかけるみたいなんだ。市内の警察署と、国道線沿いの警察施設に一斉攻撃を仕掛けるんです」
 
 
 
Act5
 
 
 
 
 花見真司美幸率いる、人ならざるモノの犯罪コネクション『S・S・C』が市政を執るきっかけとなった自衛隊と警察との戦いは簡潔に『第一次攻勢』と呼ばれている。三千狐(さんぜんにん)からなる妖狐軍団がもたらした被害は、官だけで死傷者七万人以上。破壊車両数百台。その他軍事施設への被害は重大で、政府は横須賀市、三浦市を含む神奈川県南部一帯に無防備都市宣言を県民に通告するまでに至り、この戦いでS・S・Cはさらに勢力を伸ばした。
 主要行政機関は殆どの地域で撤収が進んでおり、国の介入を許さない独立国家を花見真司美幸は建設することに成功したのである。
 自衛隊の戦車を奪い、意気揚々と進軍するS・S・Cを見て、市民は拍手喝采か、或いは唾を吐きかける者で賛否両論分かれた。
 だが市内や国道16号線沿いにある警察拠点では、まだ多数の警察官が孤立無援のまま、独自に指揮をとりS・S・Cに激しい抵抗戦を繰り広げていた。
 
 九月初旬。
 午前五時四十五分。三崎警察署。
 市が全国に誇る、三崎マグロの水揚げ港を守る要の警察署である。
 署の玄関口で立番(りつばん)を務めるその若い警察官は、勤務に入ってから何となく胸騒ぎがしてしょうがなかった。胸が圧迫されるように苦しく、息がしづらいのだ。
 
 彼は警察学校を出たばかりの卒配で、東京からこの片田舎へと派遣されてきたのだった。実戦経験は無い。だが警察官としての勘は、この半年間ですぐに養われた。
 ここで初めて人外(じんがい)という生き物を目にした。突然変異の人間、フィーンド。S・S・Cの妖狐隊員。コスプレなのではなく、眼の前で奴らの尻尾は自在に動き、人の言葉を話し、独自の文化を築く彼らに若い警察官は戦慄したのだった。
―あいつらに人権など与えてなるものか。
―僕があいつらを根絶やしにしてやる。

 特にこの横須賀を中心とした、県南東部で猛威を奮うS・S・Cには、並々ならぬ敵愾心が燃えた。
 市民の半数は彼らに協力しているようだが、場合によってはその市民すら殺害してしまっても構わないと彼は思っていた。協力者も人間と言えど、考え方が違えばもう『人でなし』なのだと思う。
 しかし、落ち着かない日だ。ここのところS・S・Cは大人しくしているようだが、何か一体、たくらんでいたりしてはいないだろうか?
 この静けさに対し、偵察に出かけた警ら課の先輩方はもう一週間も帰還していない。上の連中の動きだけは慌ただしい。
 
 本日の夕方、全署員に重大発表があるようだが、そこで何かしら情報を得られるかもしれない。だから慌てずに、今は自分の仕事の務めを果たそう。
 若い警察官はそう納得して、また意識を立番の任務へ戻した。
 猛スピードで何かが近づいてくる。
 車のエンジン音、いや、それよりも大きい車両から出る音である。
 
 車はここ二、三年のガソリン高で、公用車以外の一般車へはガソリンの使用制限が発令されているため、滅多に走っていない。
 正体はすぐに分かった。眼の前の道路に、いきなり現れた五台のダンプカーが停車していた。
 先頭のダンプは、ゆっくりと署の敷地内へと入ってくる。
「ちょっと運転手さん!?」
 
 どういうつもりなのだろう。先頭に続いて後続車が続き、署の玄関前は現れたダンプで一杯になってしまった。
 署内の同僚も何人か出てくる。
 ダンプの窓は濃いスモークのせいで運転手が見えない。
 
「早く退ちのきなさい!」
 若い警察官や集まった同僚は即座に不信感を覚えた。
 それに応えるかのように、ダンプの荷台で、気配が動いた。
 一斉に、狐面に白い和服姿のS・S・C戦闘員が荷台から姿を現した。二十狐(にじゅうにん)以上いる。後続車の荷台からも彼らは次々と身を出した。その手には散弾銃やロシア製の世界的に有名なアサルトライフルがあった。
 
「え、え、はえ?」
 若い警察官の腰には、しっかりとニューナンブがある。
 すぐそれに手を伸ばさなければならないのだが、あまりのとっさの出来事に、変な声を上げるだけに留まった。同僚たちも、動揺するだけだ。
 危機感が間近に迫っても、上司の命令なくしてすぐ行動に移せないのは、日本の警察官にありがちな思考であった。
 
「撃て!」
 荷台にいた妖狐戦闘員の一匹が号令をかけた。
 銃口が一斉に火を吹いた。
 若い警察官は、それをもろに受けたのである。東京の大学を卒業して警察官になり半年。短い人生と共に、短い警察人生にも終わりを告げたのである。
 
 
 

拳銃女王 act5 S・S・C大攻勢!② - bebe

2014/10/26 (Sun) 08:14:14

 S・S・C総裁、花見真司美幸の命令で、この日市内における抵抗勢力の一斉掃討の下知が下った。目標は三崎警察署、横須賀警察署、浦賀警察署、田浦警察署、さらに国道十六号線沿いにある金沢警察署まで攻撃が及ぶことになるという。昨年の第一次攻勢に次ぐ、第二次攻勢の開始であった。総兵力は昨年の倍以上の一万二千人。妖狐隊員だけではなく、一般市民の志願兵もこれに参加していた。なお、攻撃にあたり、敵に対する略奪に関しては一切関与しないが、近隣住民への被害は最小限に押し留めよとの命令も同時に下された。
 今回の作戦における戦略目標は警察勢力の一斉排除に加え、横浜市金沢八景にある工業地帯の確保、警察の対S・S・C最前線基地となっている鎌倉市は大船の占領が最大目標とされていた。
 
 午前六時十二分。横須賀中央、横須賀警察署前。
「テーッ!」
 妖狐砲兵指揮官の合図で、道路に停車するトラックに積まれたロケット砲発射台から、ロケット弾が一斉に発射された。
 弾は署の外壁に当たり、爆発。建物の壁に穴をあける。
 署の周辺は攻囲が完了しており、数分前の戦闘で応戦に出た警察官の死体がごろごろ転がっている。こちらの被害は戦死わずか三名であった。
 
 ロケット弾による援護射撃が十分に完了したところで、指揮官が署内への突入合図を出した。
 武装した妖狐隊員が一気に開いた壁の穴から署内に侵入してゆく。
 一階のロビーに警察官はいない。滅茶苦茶に破壊されたロビーにあるのは、爆風で吹き飛ばされた死体だけであった。
 この妖狐隊員たちのほとんどは百~二百歳の年齢で、かつては幕末の国内戦争や、先の第二次世界大戦で兵士として参加し、死線を乗り越えてきた経験豊富なベテラン隊員たちである。
 階上へ続く階段を上ったところで、拳銃の発砲音がした。生き残った警察官が、机や戸棚でバリケードを作り、ニューナンブで応戦してきたのだ。
 
 先頭を任された突入部隊を指揮する隊長は死角に隠れ、後続の部下に階段で待機するよう指示した。
 飴色の、口周りに長い髭を生やした狐面のその表情は、可笑しな笑いを浮かべている。
 その仮面の下は、いつも無口で無表情なのは、部下たちはよく知っている。
「羅々(らら)様、応援を要請しますか?」

 階段の壁に張り付いている、通信機を携帯した妖狐隊員が隊長に進言したが、隊長、羅々は首を横に振って、人差し指だけを発砲音がする方角へ指差す。
“我々だけで、制圧するぞ”
 以心伝心である。部下にその意思はすぐ伝わった。
 羅々は部下から渡された金属製の筒を受け取ると、筒の上に付いた安全ピンを外し、相手の方へと投げた。
 
 凄い閃光が起こった。
 発砲音が止み、鋭いばかりの光が羅々たちがいる階段まで届いた。閃光手投げ弾だ。
 羅々は声とも取れない声で、鋭く唸って駆け出していく。五~六名の部下がそれに付いてくる。
 バリケードをタックルで突破した先に、十数名の警察官が眼を抑えてもがいていた。
 砲撃で出来たであろう、手傷を負った者もいる。
 
「くそったれ」
「バカヤロー!」
 それらを見つけた隊員たちは慈悲をかけることなく、次々と撃ち抜いていった。
 中にはちかちかする目を抑えながら、手を挙げて降伏を斯う警察官もいたが、代わりにそいつの頭へ弾を撃ち込んでやる。
「二階の制圧は完了しました」
 
 部下の報告を受け、羅々はうなずく。
 隊長の羅々が受けた命は、警察官の掃討と警察署長、及び実際の現場を取り締まる本部長の殺害である。
 署長と本部長を殺らなければ、この作戦は意味を持たない。
 その意思を顎で動かし示す。
 
 隊員たちは警察官の掃討と、署長、本部長の捜索にあたった。
 三階、四階、抵抗する警察官を殺りながら、羅々たちは署内を制圧していく。中々本命のふたりは見つからない。
「どこに隠れてやがるんだ?」
「くそっ、煙が多くてよ……お!?」
 五階へと入った部下のひとりが、その時いそいそと動く影を発見した。駆けつけた先にあるドアへ入るのが見えた。そこには署長室とプレートに書かれていた。
 
「さっさと逃げればいいものなのに」
「だが、これで我々の戦いは終わりだな」
 そこへ羅々もやってきた。署長室のドアの前には、掃討を終えた部下たちが詰めかけた。
「ここを開けるのです。いるのは分かっているのですよ」
 
「本部長さーん、署長さーん。ふたりいるなら大歓迎でーすよー!」
 部下たちが中にいる気配に向かって叫ぶが、返事は返ってこない。
 仕方なしに、鍵がかかるドアを壊しにかかった。
 手投げ弾をドアの下に置く。
 
 羅々が部下を安全な位置まで下がらせ、アサルトライフルで手投げ弾を撃った。
 木っ端みじんになったドアから羅々が一番に突入した。
 室内は赤いじゅうたんに、ガラス戸にあるのは数々のトロフィー。壁に飾られた額縁には賞状があった。
 室内の窓際に、見事な黒檀の大きな机があった。他に隠れられそうな場所はない。
 
 アサルトライフルを構えながら、左右から部下と共に回り込む。
 いた。
 そこには制服を着、白髪に太り過ぎた体躯の男に、スーツ姿に度の強い眼鏡をかけた男が狭い机の下に隠れていたのである。
 たぶん制服を着た方が署長で、スーツが本部長だろう。
 
 デブの署長のせいで、机下のスペースが半分以上占領されて、本部長はそれより外に押し出されるようにしゃがんでいたのである。
「ひ、ひ、ひ、ひ、げげえ?」
「…………」
 発見して、歓喜の声を挙げる妖狐隊員たちを前にして、署長は情けなく家畜の声を上げるのに対し、本部長の方はムスッとして、まるで家で奥さんか子供にするような態度を崩さない。
 
「失礼ながら、この警察署の署長に、本部長とお見受けしました。もはや事ここに至って、我々の成したこと、これから要求することはお分かりになっていると思いますが、とりあえず立ち上がっていただけないでしょうかねえ?」
 部下―羅々の副官で刃矢(はや)という妖狐が、グラフィティ(※ギャング風の落書き)を施した狐面越しにふたりに言った。
 丁寧な口調のまだ二十歳の若狐で、人間を狩るのが飯より好きという残忍無常の副官だが、部下の信頼は厚い。
 
「助けてくれ、助けてくれ! 私は県警本部の言いなりで、ただここに在任するよう言われてただけなんだ。頼む!?」
 本部長は不承不承といった感じで立ち上がるのに対し、署長の方は命乞いしだした。
 しかし羅々の部下たちは、こいつが市内の警察署長会議で、税金を納めず混乱をもたらすだけの不定の輩は真っ先に処刑すべし! などと発言したという事実の裏を取ってある。今さら聞けないことであった。
「何を言うか、このジジイ」
 
「俺らを殺したがってたようじゃねえか?」
 空気に不穏が流れる中で、羅々と刃矢は本部長を威嚇しつつ、署長に詰め寄る部下たちを静観している。
「助けてくれ、頼む、頼む、頼む、頼む!」
 署長の身体は窓際に追いやられていた。それでも本当に怖く、立ち上がることすらしない。腰のピストルはあったが、それはもはや飾りでしかなかった。
 
「お前なんか裁判にかけてやらねえ、ここで死んじまえっ!!」
「ウオー!」
 それは、段々と石炭を足され、煙を噴き上げる蒸気機関車が限界を越え一気に爆発を起こしてしまうエネルギーのようであった。
 妖狐隊員たちは四、五人で署長を担ぐと、勢いをつけて、窓へと放り投げたのであった。

「ウギー!」
 窓ガラスを破って、署長、下へ落ちる。五階からである。助かるはずもなかった。どすっ! という音がした。
「やってやったぜ」
「あんなやつに使う弾の一発、もったいないからな」
 
 思わぬ形で死んだ署長に、羅々はあまり反応しなかった。刃矢は冷たく笑った。
「さてさて、本部長さん。あんたには敬意を表して、自分で死ぬ権限ぐらいはあげますよ。それともここから落として欲しいですかぁ?」
 刃矢は笑いを堪え切れずに、肩を上下させながら本部長に問うた。
 本部長は無言のまま、羅々たちを睨みつけていた。憤りを感じさせる、険しい表情であった。
 
「ふふん、このまま黙って死んでたまるか、とでも言いたそうですね。では宜しい、私と賭けをしましょうか」
 刃矢がそう言うと、部下たちに命じ、本部長の両脇を抑え廊下へと連れ出す。
 羅々は署長室のドアがあった場所で狐面を上にずらし、煙草に火を点けすぱすぱ吸い出し、副官の采配に見物を決め込むこととした。
「私と早撃ち勝負で決闘をしてね、貴方が勝ったらここから逃がして差し上げますよ」
 
 狐面の下で、不敵そうに笑い、本部長には好条件とも言える内容を示した。部下から声が湧き上がる。
 刃矢と、脇を固める部下から解放された本部長は、互いに十メートルほど離れて対峙した。
「さあさあ懐のピストルに手をかけなさい。でも私の手に光るものが見えてしまったら、貴方の人生最後の明り……ということになりますからね。さっさと撃ってきてごらんなさい」
 
 じり、じり、じり、
 熱気が本部長の全身を巡る。それは、この九月の残暑のせいだけではない、力がみなぎってきているからだ。本部長には妻がいて、高校生と中学生の子供が二人いる。家族の顔が瞼に浮かんでくるのだ。
 守らなければ……
 
 暴力に警察組織が屈するなど、あってはならぬ珍事だから。犯罪者に一般市民が恭順するなど、この警察国家日本において、あってはならぬことだから。自分の家族が被害に遭うなど―考えたくもないことだから。
 本部長の右手が、左脇のホルスターに素早く伸びた。
 装弾済みの拳銃が、刃矢に向けられる。神速に匹敵するスピードであった。
 引き金を絞ろうとする本部長は、刃矢の手で光る何かを認識した。
 
 ぴかっ
 ぴかっ
 ぴかっ
 
 刃矢の手元で光が、三度、輝いた。
 本部長は引き金を絞ろうとしたが、ふいに、顔面に激痛がした。
 こんな時に頭痛!?
 それは、鋭利な痛みであった。これぐらいがどうだというのだ。俺はこいつらを倒さなければならないのだ。
 
 倒す。
 倒す……
 倒―
 どっと本部長は後ろに倒れた。
 
 その顔に、三本の棒手裏剣が深くえぐるように突き刺さっていたのである。
「はい、残念でしたねー」
 刃矢は、もう死にかけている本部長の顔から、今投げた手裏剣を回収した。
 本部長の視線は、朱に染まっていく。
 
 妻―琴未(ことみ)。子供たち―翔(かける)翼(つばさ)…………
 ごめん。
 力のあるものが勝ち、官軍となる。負ければ逆賊となり、征伐されるのがこの現代の世の中であった。
 昔の人はそれを、地獄と呼んだ。
 
 午前八時四二分、市内の警察勢力の砦であった横須賀警察署陥落。任務完了。
 その他、三崎、浦賀、田浦の警察署も同じ時刻に制圧が終わったとのことである。
 

拳銃女王 act5 S・S・C大攻勢!③ - bebe

2014/10/26 (Sun) 08:21:21

 午前十一時二三分。鎌倉市、大船警察署近くの交差点。
 横須賀市内からS・S・Cの一斉攻撃を受けたとの報告を受信した大船警察はその後さらにS・S・Cの一隊が進行中、との連絡を七時頃に受けた。大船警察署署員は総出で非常線を張り、市内に厳戒態勢を敷いていた。それ以降の通信は途絶えてしまったが。
 市民に外出禁止令を発令し、主要道路は封鎖、街は市街戦を想定した備えをする警察や駐屯していた自衛隊でごったがえしていたのである。
 
「本当に奴らは進撃してくるのか? だとしたらまずいぞ」
 大きな交差点には、二十数名の警察官、自衛隊員からなる混成部隊が道路を封鎖し、警備にあたっている。
 自衛隊部隊長の独りごとに、指揮を任された大船署の警部が、
「我々の装備のことを言っているのですか?」
 
 と思わず問いかけた。
 警察と自衛隊が道路の封鎖に使っている車両は、何と民間から徴発した観光バスである。
 独自に保有している特型警備車や自衛隊のトラックは一台も見当たらない。
 物資は優先的に関西方面で交戦状態にあるフィーンド軍団、マスターズ・アーミー(軍隊様式)フィーンドとの戦闘に回されるため、ひどい時には弾薬はおろか、食糧すら届かない場合がある。
 
 この部隊の装備も貧弱であった。戦闘車両は無し。弾薬も乏しいし、食事は一日に二回、しかも支給予定量よりはるかに少ない量で、任務に就かされているのだ。
「大軍に迫られたら、あっという間に撃破されてしまいます」
「しかしそれでも我々は奴らを止めなければなりません」
 自衛隊部隊長はあくまでも冷静に分析しているつもりだ。警部は何が何でもS・S・Cを食い止めなければという使命感があった。
 
「一般市民のためにも……」
「しかしその市民が奴らの兵力供給源となっているのですよ? 他にも労働者、技術者として大勢協力しているそうじゃないですか。その見返りとしての食糧がどこから運ばれているかご存知ですか? アメリカの“鋼鉄の獅子”がS・S・Cを援助しているのですよ」
 その通りであった。
 現在アメリカで起こっている内戦、第二次南北戦争は合衆国軍と反旗を翻した南部同盟軍との間で激しい戦闘が繰り広げられている。
 
 二足歩行可能な、大型のロボット兵器が戦場で活躍しているという、SFのような戦争となっているらしい。
 そしてその南部同盟の旗手となっているのが若干二十歳のスペイン系の名門カスティーリャ家の当主、エドワード・アルケー・カスティーリャ率いる鋼鉄の獅子という名の政党なのである。
 鋼鉄の獅子は公然とS・S・Cに対する援助を発表し、日用品から食糧までを毎月かなりの量送っているのだ。積み荷には密かに重火器も含まれているらしいが。
 エドワード・カスティーリャの金髪碧眼、王子様的な容姿をいいことに、側近たちはマスコミを使って世界中に宣伝し、白馬の王子様に憧れる女性たちにはもちろん、南部同盟の意義は今や世界の誰もが支持するまでに至っている。

 その南部同盟最大勢力である鋼鉄の獅子が、関東南部で猛威を奮う犯罪組織―日本の行政側はそういう認識である―を支援している。
 とんでもないことであった。
 イケメンならば正義という軽い認識で支持する人もいるだろうが、時間をかけて宣伝すれば、そういう非・倫理的な理由でくっついている人々もやがては本気になる。
 実際もう本気になっている少女、少年たちはかなりの数で、銃を手にした彼らティーンエイジャーは密かに『エドワード親衛隊』を結成し、アメリカ政府への妨害活動に従事しているとのことだ。
 
「なんてことだ……」
「日本の若者がそのようになったらおしまいです。だから、我々が空きっぱらでいようと、食い止めなければならないのです」
 自衛隊部隊長はあくまで冷静で論理的にことを進めようと必死であった。
 警部に少しでも伝われば良いが、果たして警察官に理解してもらえるのだろうか?
 
 二十万人を誇った自衛隊は、フィーンド軍団との戦闘で既に四分の一まで兵力が減らされてしまった。
 関西で対するマスターズ・アーミー・フィーンドだけで百五十万の軍勢がいるのだ。
 しかも、ヨーロッパで現在北欧諸国に進行中のEU(ヨーロッパ連合)フィーンド軍は、何と一千万人の常備軍がいるとか。昨年ロシアに進撃のおり、冬将軍でかなりの数が凍死し撤退したらしいが、それでも一千万もいれば自然災害ぐらい蚊が刺したようなものだろう。
「狐たちを倒しても、フィーンドが来る。日本のフィーンドを絶滅させたとしても、ヨーロッパかアメリカから……」
 
 警部の言葉に、部隊長は苦い気持ちになった。
 奴らに勝るものと言えば、それは忍耐力か、武器の無い現実においてはあまり役に立ちそうもない精神力だけなのかもしれない。
「警部、警部! 道の向こうから誰かきます」
 巡査のひとりが、警部に呼び掛ける。
 
 警部と部隊長は巡査のいる方へと小走りに駆け寄った。
 警察と自衛隊が封鎖するこの交差点に向かって約百メートル先に、ふたつの人影が確かにこちらに歩いてくる。
 近づいてくるにつれて、シルエットが確認できる。
 ひとりは、S・S・Cの妖狐隊員である。狐面に白い和服。一見すると山伏のようなその目立つ服装は機能的に作られているらしく、一匹で二十人の武装警察官を倒すとされている。
 
 もうひとりも狐の面で顔を覆っているし、妖狐の特徴である狐耳が頭から、ふさふさの尾が尻から生えているところを見れば、おのずと人ならざるモノという認識が浮かんでくる。ただしこちらは和服ではなく、紐式のボタンのついた黒い長袖―二十世紀前半頃の中国人の服装―に黒いズボンに、足元はカンフー映画でブルース・リー等が履いていたいわゆるカンフーシューズというものを履いており、いかにもステレオタイプな中国人の格好をしている。
 もしかしたら中国から来た妖狐なのかもしれない。狐面の様式が独特というか、オレンジや青の艶やかな模様で色鮮やかなのだ。日本の妖狐の狐面はシンプルなのが多いから、実際、中国かどこかの外国の妖狐なのかもしれなかった。
 二匹は視認する限り手ぶらのようである。いずれにせよ、敵対勢力の構成員とみなされるふたり組がこの厳戒態勢の中、たった二匹で現れたのだから、黙っていることもない。
 
 警察官や自衛隊員はふたりに対して盾を構え、密集した。
 警部はこちらに歩いてくる二匹の妖狐にメガフォンを使って呼びかける。
「そこで止まりなさい! 現在市内には外出禁止令が出ている。この命令に従わない時には発砲する権限が我々には与えられている!」
 いかなる時でもいきなり撃つというアメリカの警察の真似はできない。まずは相手を止めて事情を聴取し、疑わしかったら署に連行するというのが慣わしのようになっている。
 
 近づくにつれて二匹の妖狐のシルエットがはっきりとする。
 肩幅は二匹とも小さく、どことなく大人になりきれてない体格のように見える。もしかしたら、二匹は狐でも十代の少年妖狐なのかもしれなかった。
「止まりなさい…止まれー!」
 制止を聞こうとしない二匹である。警部の緊張は限界を越えようとしており、ホルスターのピストルを二匹に向けて構えた。
 
 その動きを察知したかのように、中国服を着た妖狐が後ろに手を回し、また回した手を前に、まるでボールを投げるかのごとく身体ごと振りかぶった。
 その手から投げられた物体が、盾を構える密集陣形の真ん中に落ちてくる。
 部隊長だけはその素早く落ちてくる物体が何なのかすぐに分かった。それは細長い棒状をしていた。
―柄付き手投げ弾、ポテトマッシャー!?
 
「逃げ―」
 警察官らの間に落ちた手投げ弾は、部隊長が逃げろと叫び終えるまでに、ボムッ! と爆発してしまった。
「グバアッ!」
「ヒゲェゲェェー!」
 
 あっという間に七~八人が、吹っ飛んだ。
 後方に控えていた自衛隊員や警察官が怒号を発し、二匹に殺到しようとする。
 また中国服の少年妖狐が後ろに手を回した。
 手からはみ出してしまいそうなほどの大きな金属製の物体―四丁のオートマチック拳銃が手にされており、うち二丁を相方の妖狐へ渡し、二丁自分の両手へやる。手品のようである。
 
「やっと本番だぜェ」
 和服の少年妖狐が猪の集団のように突っ込んでくる警察官たちへ二丁拳銃を構えた。
「是必勝(かならず勝つよ)」
 中国服の少年妖狐が、中国語で叫ぶ。
 
 二匹が持つ四丁の拳銃が一斉に発砲音を上げた。
「喰らえ!」
「落下到地獄!(地獄へ落ちな!)」
 弾は面白いように警察官たちに命中していく。
 

拳銃女王 act5 S・S・C大攻勢!④ - bebe

2014/10/26 (Sun) 08:40:58

 四丁の拳銃はマシンガンのように弾を吐き出していく。
 モーゼル・シュネルフォイアー。元となった原型の銃は百二十年前ドイツで設計された。これはその改良型のマシンピストルタイプである。今回使用しているのは中国製のコピー品であった。
「おぶぇ!」
「ガッガガァ!」
 
 抵抗する自衛隊、警察官を射殺しながら、バスのバリケードで囲み、彼らの陣地となっている中枢へ少年妖狐のふたりは乗り込んでいく。
「貴彦(たかひこ) 郷里的現場指揮者?(ここの現場の指揮官はどこにいると思う?)」
「俺は道路の方を探すさ、継佐(けいさ)はバスの周りを探してみてくれよ」
 日本狐の少年の名は直未貴彦(すぐみたかひこ)中国狐の少年は呉 継佐(ご けいさ)といった。ふたりは十七歳で、本隊の到着前に少数で敵をかく乱する先発突進隊の精鋭であった。
 
「う……う……う…」
「ガブ~ガブ~……」
 最初の手投げ弾の攻撃で死に切れなかった警察官と自衛隊員が地面に這いつくばって蠢いている。手足がちぎれ飛び、腸が脱出しても、彼らは生きていた。とてつもない出血のせいであちこちに血が、錆色の赤ペンキをバケツごとひっくり返したような状況になっている。
「件公、弱(何だ、弱いね)」
 
 継佐はその哀れな半骸(はんむくろ)となって死に切れない者たちを足で抑えつけ、ひとりひとりに止めをさしてやる。
「是槽就槽在、鍛身体的原因(なまじ身体を鍛えているから、こういうことになるんだ)」
 継佐の黒いズボンに血が跳ねる。
 ヒラの警察官たちは始末をつけた。後は責任者を発見すればいいだけだ。
 
 継佐は数台のバスの間を縫うようにして生き残りがいないか探した。
 近隣のマンションや住宅から、住民たちがカーテンの隙間から覗いているのが見えるが、誰も、何も言わなかった。通報しようにも、目の前で警察官が殺されているし、出動してくれる警官も出払っていないだろう。
 三台目のバスに差しかかる。一応中もチェックする。いない。
 逃げたかな?
 
 継佐がそう思った矢先、ふと視線をバスのバリケードで出来た道に戻すと、迷彩服にヘルメットの男が、ピストルを構えて立っていた。自衛隊部隊長だ。
「曖牙!(アイヤー!)ども、ども。僕の、探しモノ見つけタ」
 迷彩服の階級章が将校をあらわしていたので、継佐は日本人が想像するような中国人の反応をしてみせた。わざと。
「どもどもじゃねえ、この人殺し。お前ら自分たちが何してるのか分かってるのか?」
 たどたどしい日本語を話す継佐に、部隊長は嫌悪感を露わにした。
 
「何故、あなた、さっさと撃たなイ? 僕の、銃なら両手ごとバスのボデイにつっぱねてる。撃つなら机会(チャンス)ですヨ?」
「お前はまだ子供か? それとも外見だけか。狐なら変化の術を使えんだろ?」
「ノウノウ。僕は花も咲かりの、十七歳。青春正当中(青春真っ只中だよ)」
 狐面の下の継佐の顔はにこやかである。その面の下がどういう顔か、仲間なら誰でも知っている。栗毛色をした短いボブカット。顔、鼻立ちは小さく、目は大きく愛嬌があって他人によく女の子と間違えられるぐらいの美しさである。
 
 部隊長は大きく息を吸い、小さく吐くという行為を繰り返している。
 敵、子供を殺すことにためらっているのだ。何をためらうのか。どうして躊躇しなければならないのか?
 継佐にはそれが分からない。ましてやこっちは人間の子ではない。華僑を騙る家に生まれ、横浜の中国人街で密かに人間として暮らしていた、日本という土地で育ったが立派に中国産の妖狐である。
 ネットであれだけ中国、韓国を叩いているくせに、いざ眼の前に問題の国籍の者がいると、手出しも口出しもできないのが日本人の悪い癖だ。
 
「死にたくなかったら、銃を手から離すんだ。離したら両手を開いてバスにゆっくりと手をつくんだ」
「オーケー、ジャ、離すよ」
 継佐は文字通り、モーゼルを手からぱっと離した。
 落ちてゆくモーゼルを追うようにして、継佐の頭も落ちるように下がった。
 
 部隊長との距離は、僅かに一間あまりである。
 継佐の空の手が部隊長の足に伸びた。
 鋭い痛みが部隊長の足首で跳ねる。
「ぐあっ!?」
 
 膝を突いた。
 続いて首筋にも氷のような冷たさで体内の肉の熱さが下げられるような、圧迫感を加えられる。
「ヌハッ」
 かろうじてピストルは離さない。
 
 もう躊躇などなかった。
 子供を訓練して戦場に送り込むS・S・Cを…などと考えるつもりはない。
 子供とて、悪鬼だ。畜生だ。こん畜生を撃ってやるつもりで部隊長はいた。呻こうとした。だが部隊長は呻く代わりに、ごぷりと吐血する。
 継佐の手には輪投げがあった。銀色の、光沢を放つ輪投げである。
 
 正し、その輪投げの外側には刃が付いていた。
―チャクラム。
 インド製の暗器である。
「戸惑うなて、言ったでしょ?」
 
 継左は暗鬼をまた手品のように上着の袖に引っこめると、落としたモーゼルを拾い上げた。
 息も絶え絶えの部隊長の頭に目がける。
「あ、僕、言わなかたか、不留神故(こりゃうっかりだ)」
 
 パ、パパッパッ
 
 部隊長を撃ったところで一丁が弾切れをしたのでリロードしていると、貴彦がこちらに走り寄ってくるのが見えた。
 手に何かサッカーボールほどの大きさの重そうな何かを持っている。
「やったあ、やった! 今日一番の手柄だぞう。ほら!」
 と元気よく継佐の前に突きだしたのは人間の生首であった。
 
 苦渋の表情を浮かべて、舌がべろりと出ている。
「貴彦、刃物は僕以外持ってきてなかったはつ、どやて斬ったカ?」
「いやあ、こいつらの中に自衛隊もいたから、そいつのサバイバルナイフを取って斬り落したんだ、生きたままな!」
 襟の階級章から判断して、この首の主は警部だったから斬ったと貴彦は付け加えた。
 
 継左は貴彦の狐面の紐に黙って手をかけた。
 狐面を外すと、そこから元気の良さそうな少年の顔が現れた。
 ミディアム髪で、スポーツが得意そうな、はつらつとした面持ちである。得意なのは生きている者の命を奪うことなのだが。
 継差も狐面を外す。そこから、少女のような、甘い面(おもて)が蕾から誕生したての蓮華の花のように現れる。
 
「貴彦……」
「え?」
 継佐が貴彦の胸へと擦り寄る。その声は、蜜のようにとろけそうな声音であった。
「本隊が、来るまで、時間あるか?」
 
「あるけど、どうしてだ?」
 ぶっきらぼうに問い直し、怪訝そうにする貴彦だったが、その時はっと気が付いた。
 こういう声を出すときの継佐が、何を求めているか。欲しがっているものがある時の声づかい。仕草、表情、それらを総称して継佐は今、貴彦に欲情しているのだった。
「……しようヨ」
 
「な、な、何お……?」
 貴彦はたじろいた。
「僕を、また、女のようにしてヨ」
 継佐を突き飛ばし、被りを振って貴彦は逃げようとした。上背や足の長さなら継佐よりあった。
 だがキャリアは遥かに継佐の方が上である。
 
 世間からすれば、受けが攻めを襲うようなものだ。
 貴彦の背中に飛びついた継佐は足を絡めてきた。
 継佐が圧し掛かるような形で貴彦は倒れてしまった。前へ振り向かされる。
 青い雲があり、両壁にバスの車体が迫るようにしてあった。
 
 セミの鳴き声はこの時期、もう遥か山奥でしか聞こえない。
 にわかに暑い、惨劇のあった陽下。
 そこに瞳をきらきらさせた継佐が貴彦を覗き込んでいた。
「また逃げられなかたネ。逃げないで。もう逃がさない。逃げられなくしてあげル……」
 上着の紐ボタンを継佐は外してゆく。
 
 外し終えて脱いだ上着から、成熟しきってない少年の肉体が露わになった。
 怖がっている貴彦に脱いだ上着の一部がかかる。貴彦は身体をよじらせるところ、観念しきってない様子だ。
 継佐は笑みをたたえると、貴彦の和服に手をかけた。
 小さい悲鳴を貴彦は上げた。
 
 どこかから、ザッザッザッと、軍勢が行進してくるような足音が聞こえた。
 
 午後十二時二四分。鎌倉市、大船の数か所で防衛部隊の前衛が壊滅。本隊進撃開始。

あとがき☆ - bebe

2014/10/26 (Sun) 09:07:00

1年ぶりにキーをオフィスワークに向けて叩いたら、すいすい進みました。これも1年分のエネルギーの放出ということでしょうか。bebeです、お久しぶりな拳銃女王。皆様もお変わりないでしょうか?
BL表現苦手な方はいらっしゃるかもしれませんが、相応に感化されてしまってつい、、、、、すいません(汗
新キャラ一挙に4人、、、4匹でしょうか(笑)登場させてみました。雨子は最初にちょこっと登場。おいおい主人公ww
次回は少なくとも年内には行きたいなと思います。趣味ですが、物語はきちんと完結させないと何だか気持ちが悪くなってしまいますからね。

名前
件名
メッセージ
画像
メールアドレス
URL
文字色
編集/削除キー (半角英数字のみで4~8文字)
プレビューする (投稿前に、内容をプレビューして確認できます)

Copyright © 1999- FC2, inc All Rights Reserved.